2003年9月23日(火)

大辺峠と矢の原湿原

昨日台風が通過した。 今日は台風一過で晴れ。 ただしこの晴天も長くは続かず、 翌週は雨が予想されていた。 となると、この貴重な晴れ間を逃す手は無い。 春以来サイクリングから遠ざかっていたが、数日前に軽く走ってみたら、 やはりサイクリングの良さを改めて感じた。 会津の名山である志津倉山の登山口まで舗装された林道が走っているのを、 以前登山したときに知った。 この林道が標高約1000 mの峠を越え三島町から昭和村に抜けることが出来る事を知り、 地図を眺めながらいつか越えたいと思っていた。

5:30に起床。 朝食は運転しながらとることにしてすぐ出発。 三島の会津宮下駅前に駐車し、 7:50には自転車で走り出すことが出来た。 大谷川沿いの県道を、渓谷を眺めながらのんびりと走り、 坂を登る。 以前とは言っても6年前 ('97年)、車であっという間に通過してしまったルートなので、 記憶がほとんど無い。 けれど、今回は目で追える速度で走っているので、 この記憶は当分忘れないだろう。 旅をするには速度は遅ければ遅いほど、 苦労すればするほど良いと思う。 歩いて日本中を回ったら、それこそ最高の旅かもしれない。 しかしそれでは何年もかかってしまう。 その点、自転車は適度な速度でかつ適当に融通が利く。 車でも、電車でもバスでも、飛行機でも運ぶことが出来る。 片道で行きっぱなしの旅が出来る。 最高の道具だと思う。

地図を見ていたにもかかわらず、新しい舗装道に惹かれて、 砂利道になりついには行き止まってしまった。 畑仕事をしていたお婆ちゃんに道を尋ねたら、 この先にも以前は道があり、大辺峠が開通するまでは良く使われていたという。 今は雑草が背丈の倍以上も茂り、とても藪こぎをして進もうとは思わない。

(写真1: 間違えた未舗装道。正面が志津倉山) (写真2: 大辺峠にて)

分岐まで戻り、正しいルートへ。 志津倉山が近づいてきた。 登山口の駐車場には2台しか車が停まっていない。 あと2-3週もするとブナの黄葉が美しいはずだ。 アップがきつくなってきた。 ルートも九十九折になり、涼しいはずがダラダラ汗をかいてきた。 湧き水があちこちから出ているので、そのたびに頭から水をかぶる。 キーンと冷える。 10:00頃にようやく大辺峠 (標高970 m) に到着。 駅からの標高差は約700 m強だった。 登山口を過ぎてからは、1台の車ともすれ違わなかった。 遠くに雪の無い飯豊連峰が見える。

一休みして、一気に標高差500 mを下りる。 下るにつれ空気が暖かくなった気がした。 ブレーキを握る力がなくなった頃に昭和村の国道400号線に合流。 昭和村は本州で唯一のからむし生産地。 からむしとはイラクサ科の植物で、 その茎の繊維からつくるからむし織は、反物にすると100年持つと言われるほど糸が強く、 また肌に付着せずその着心地の良さは一度着てしまうと他の織物を着られなくなるとも、 言われてるらしい。 現在、本州ではこの昭和村だけに残った伝統文化だ。 そのからむし織の里 (博物館や体験交流館がある) で一休み。 脚休め。

(写真3: からむしの里) (写真4: 昭和村の風景)

国道401号線を南下する。 '96年に駒止峠から林道を下り401号線から船ヶ鼻峠へと走ったことがあるが、 その時のルートと合流した。 点の旅はしたくない。 その行程も旅と考えるならば、 それは線であるべきだと思う。 だから、以前に近くを通ったことがある場合、 出来るだけ前の旅と交差するようにしている。 そうして日本中を線で埋め尽くしたい。

矢の原湿原を目指してまた坂道を登る。 ここも車が通らない静かな道だ。 ひと汗かいて約200 mの標高差を登り、正午頃に湿原に到着。 中央に矢の原沼があり、 シーズンには水芭蕉が咲く。 高層と低層の2つの湿原で形成され、野鳥が多く、 ハッチョウトンボなども生息しているらしい。 訪れる人も少ない静かな湿原だ。 沼を見ながらおむすびのお弁当で昼食にする。

(写真5: 矢の原湿原) (写真6: 沼沢湖へダイビング!! はしません) (写真7: 只見川)

再度、昭和村に向かい一気に下る。 そしてそのまま国道400号線を野尻川に沿って金山町まで下り続ける。 追い風。 疲れているので、長い下りは助かる。 このまま只見川沿いの国道252号線に出ても良いのだが、 そこはだいぶ前に走ったことがある。 沼沢湖には車で来たことはあるが、自転車ではない。 一度下り坂でだれ切った両脚に活を入れ、また約300 mの標高差を登る。 ついには脚が攣りそうになったが、こらえて登り続ける。 幻の沼の主・ヌッシーが生息する?沼沢湖は、外縁を山に囲まれたカルデラ湖。 周囲は8 kmあるらしい。 晴れたときには沼の色は青く澄み吸い込まれるくらい綺麗なのだが、 今日は午後から雲が出てきてそれは望めない。 深い緑色に沈みこんでいる。 カヌーが何艘か浮いている。 いつか、道路がなく陸から近づけない湖の対岸を、 カヌーで訪れてみようかなぁ? 最後は下るだけ。 只見川を挟んで国道252号線の対岸の県道を会津宮下駅まで。 14:50に到着。

走った距離は82.1 km。 累積標高はざっと1220 m以上。 いやー、久々に走った、走った。 満足のいく走りだった。

(地図8: 今回のルート概略)


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