南アルプスは、実は登ったことが無い。 学生の頃、南アルプス スーパー林道を自転車で走ろうとした。 でも完全に自家用車 (?) 締め出しだったので、縁がなかった。 最近、学生時代の友人との登山は北アルプスが続いていたので、南も行ってみよう!! ということになった。 登る山は鳳凰三山。 南アルプス最高峰の北岳や甲斐駒ケ岳といった名山の展望が素晴らしい、深田百名山である。 『鳳凰山とは、現在では地蔵岳、観音岳、薬師岳の三峰の総称となっている。 (中略) 地蔵岳の絶頂に、二個の巨石が相抱くように突っ立っている。 古人はこれを大日如来に擬して尊崇したところから、法皇山の名が生じたと言われている (後略) 』 (日本百名山、深田久弥著より)。 こんな背景の山だ。
東京での出張を終え、友人と銀座で飲んだ後に、府中のH田さんのアパートに11時頃到着。 山に行く直前はいつも飲んでいるような気がしてならない。 気のせいかな? 荷物は宅配便で予めH田さん宅に送っておいた。 明日からの山行は結局他の友人の都合がつかず、 2人で行くこととなった。
5:00起床。 すぐに出発の準備をし、H田さんの車で出発。 中央道は既に少し渋滞したが、 青木鉱泉の登山口を8:30に歩き出すことが出来た。 このドンドコ沢のルートは深田久弥が登ったルート。 現在では夜叉人峠からの縦走ルートが人気。 ただし、今年は南アルプススーパー林道の土砂災害のため、バスや車が入れない。 今年に限っては、谷道の青木鉱泉コースか尾根道の御座石鉱泉コースが現実的なルートになっている。
雲一つ無い快晴の空。 正面の巨大な壁は、どうやら薬師岳の山頂のようだ。 ゆっくりと紅葉の森の中を歩く。
このルートは渓流沿いの登山道なので、高巻きなどの一部急な登りもあって、息が切れる。 でも、最高の紅葉が疲れを癒してくれる。 登山口から約2時間弱で南精進ヶ滝。 このドンドコ沢ルートでは4つの滝が見られるが、ここが第一弾。 滝を見るには足場が悪かったが、 30 m位の落差だろうか? 2段に落ちる豪快な滝だった。 登山道は急になってきた。 少し歩いたところが鳳凰の滝入り口。 滝は登山道から少し離れるので、ここで昼食にする。 カメラだけ持ち鳳凰の滝へ。 約10 mの落差の滝。 滝壷までは遠かったので行かなかった。 更に急登は続き、白糸の滝。 更に1時間ほど歩いて最後が五色滝。 高さ50 m位あるのだろうか? 2段になっている、立派で清楚な滝だ。 マイナスイオンが周辺に飛び散り、 ここまでの疲れがスーっ と引くような気がした。
さらに森の中を進む。 紅葉は大分落ちている。 どうもH田さんのペースが上がらない。 体調が悪そうだ。 ふいに地蔵岳のオベリスクが正面に見えた。 今日時間があれば登るつもりだったが、まだまだ遠く高いところに見える。
今日は鳳凰小屋に泊まり、ゆっくりすることにした。 小屋に15時少し前に到着。
この時期の南アルプスとしては格段に暖かいらしい。 昨年の同時期の連休では雪だったとの事。
小屋はぎゅうぎゅう詰めと言うわけではないものも、それなりに混んでいる。
小屋前のキャンプ場でキャンプする登山者も多い。
冷え込みの無い朝だった。 これが標高2400 mの11月とは思えない。 6:00から小屋の朝食。 快晴。 ところがH田さんの体調は悪く、食欲も無い。
7:00に地蔵岳を目指して歩き出す。 H田さんの足取りは昨日以上に重い。 一方の僕は絶好調。 H田さんはこの秋に荒川岳〜聖岳の標高3000 mを超える山歩きをしているので、高山病ではないはず。 以前僕自身も二日酔いの時には標高800 mの山も途中で断念した経験がある。 山登り時の体調管理は、結構繊細だと思う。 1時間弱で地蔵岳直下の賽の河原に到着。 ここには子授け地蔵が立ち並んでいる。 地蔵岳のオベリスクは目の前。 標高2764 mの山頂にはクライミング技術が無いと立てないので、景色だけを楽しむことに。 南は鳳凰三山最高峰の観音岳 (2840 m) が近く、その向こうに富士山も見える。 北東には八ヶ岳、北西には甲斐駒ケ岳の白い花崗岩が大きい。 少し雲があるが、青空が深い。
さらに5分ほど登った赤抜沢ノ頭からは、先の山々に加え、西に仙丈ケ岳。 その南に日本標高第二位 北岳の堂々とそびえている姿を眺めることが出来る。 そのさらに南には塩見岳から遠方の山々。 甲斐駒の奥に小さいが北アルプスまで見える。 ここでH田さんはついにダウン。 これ以上この標高で歩き続けられないので、 鳳凰小屋に戻って休んでもらうことにした。 僕は観音岳までの縦走路を歩く。 あまり待たすわけにも行かないので、駆け足のようなペースで歩く。 眺めの素晴らしい岩陵帯が鞍部まで続く。 そこを過ぎてからは潅木帯になる。 潅木帯をぬけ視界が開けたところが観音岳山頂。 鳳凰三山のもう一つ薬師岳がすぐ近くに見下ろせる。 丁度その奥には富士山がきれいに青空に浮かび上がっている。 360度、遮るものの無い大展望。 特に北岳から農鳥岳にかけての白峰三山の迫力は、この鳳凰三山ならではの贅沢な眺め。 H田さんの分まで、存分に満喫した。
H田さんを待たせているので、薬師岳には向かわずに、鳳凰小屋へと戻る。 別れてから約2時間で戻ってこれた。 ペースはすこぶる早かったことになる。 鳳凰小屋前で一休み。 H田さんは休んだおかげで少しは落ち着いたようだ。 穏やかな天気。 雲が無いく、小屋周辺には風が無い。 ポカポカして、今が11月ということを忘れてしまいそうだ。
10:40に往路と同じドンドコ沢ルートで青木鉱泉に向けて下り始める。 観音岳山頂から考えると、標高差1700 mを下ることになる。 これだけの下りは急いではいけない。 ヒザがガクガクになってしまうからだ。 ゆっくりゆっくりと下る。 滝も見ない。 休みをふんだんに取る。 青木鉱泉の登山口にたどり着いたのは14:35。 天気に恵まれた山行だった。
甲府市内の渋滞を抜けて、湯村温泉のホテルに泊まる。 我慢していたビールが喉にしみる。
天気がよければ、近くの紅葉の名所である西沢渓谷を訪れるつもりだったが、 昨日までとは一転して小雨混じりのすっきりしない空。 渋滞が始まる前に帰ることにした。
初めての南アルプスはとても好印象で、その奥に見える僕にとっての未知の山々にとても魅力を感じた。 やっぱり山は天気が良いのが一番だ。