明け方はどんよりしていた。 4:30に起床し6:00に出発。 今日は礼文島に向かうため、 鴛泊港のフェリー乗り場まで、まずは走る。 反時計回りで40 km。 利尻山は雲に隠れ、 特に目を見張るほどの景色は無く、9:00には港に着いてしまった。 これが晴れていて利尻山が綺麗に見えていたなら、 いくつかある沼に逆さ利尻が映えて美しかったろうに。 少し残念だ。
10:05発のフェリーに乗り、礼文島の香深には40分後に到着。 天気がどんよりしていたせいか、寂しい北の島という第一印象だった。 6 kmほど北上した香深井のキャンプ場にテントを張り、身軽になってさらに北上する。 東風が相変わらず強い。 北東端の金田ノ岬を越えた途端に、 日本最北限の須古屯 (スコトン) 岬とトド島が見えた。 さあ、あと10 kmだ。
船泊湾沿いに走り、最後の登り坂を越えたところがスコトン岬。 まぎらわしいが、 ここは日本最北端ではなく最北限と呼ばれている。 微妙に宗谷岬より南にあるらしい (北緯45度28分)。 目の前にあるトド島は、以前は観光船等で渡れたようだが、 今は無人島になっている。
礼文島は花の島として有名。 特に有名なのが西岸の車道の無いハイキング道を、 4時間または8時間かけて歩くコース。 今回はとても全部を歩くことは日程的に出来ないので、 ほんの少しだけ自転車で同じコースをたどってみた。 高山植物が至るところに咲き乱れている。 ツルフジバカマ、タカネナデシコ、ツリガネニンジン、ハマベンケイソウなどなど。 ゴロタ岬まで30分ほど自転車を離れて歩いてみた。 岬から青く澄んだ海を見下ろしたとき、 ここは北の楽園だと思った。 寂しいと最初に感じたのはあくまで都会の基準での見方であって、 自然の基準で見たらここほど美しい土地も少ないだろう。 厳しい自然があるからこそ、 必死に生存競争に勝つためにこそ、一斉に色とりどりの花を咲かせる。 美しい自然の裏には、 厳しさが必ず共存することも忘れてはいけないことだと思う。 だからこそ高山植物などの希少種は大切にしなければならないんだ。
キャンプ場に戻る途中で、ボトムブラケットのカニ目ネジ
(ペダルが付いているクランク軸の回転部の部品。 じかに体重がかかるので、非常に重要な回転部)
がカタカタに緩んでいる事に気がついた。 とりあえずは大事に至っておらず、一安心。
久々のキャンプツーリングだったので、メンテナンス時の締めが緩かったのかも知れない。
そうそう、スコトン岬で自転車を停めている時に、強風で自転車が倒れ、
ハンドルバーにつけていたミラーが折れてしまった。 今回の旅はこんなトラブルも多い。
夕食は、最終日を祝ってイクラをふんだんに盛ったスパゲッティ。 北海道らしく豪快に。 なかなかの味だった。
北海道最終日。 4:30に起床し6:10に出発。 稚内に向かうフェリーの時間は8:45なので、 2時間ほど時間があまった。 桃岩まで走り、薄青空の隙間から利尻山を眺めようと思ったが、 残念ながら全容は見せてもらえなかった。 展望台から灯台まで2.5 km。 吸い込まれてついつい歩き出しそうになってしまう。 途中まで歩いたが、 フェリーに間に合わなくなるので諦めて引き返した。 いつか、ゆっくりと8時間かけて島を歩こう。 もちろん花のベストシーズンに。
稚内行きのフェリーは、満席・満車。 15分ほど出航が遅れた。 その間もずーっと、 礼文島名物礼文ユースホステル宿泊者によるフェリーの見送りが続いた。 歌を歌い、腕を振っての見送り。 見送られる側も 『行ってきまーす』 の大合唱。 決して、さようならではない。 ここに帰ってくるのが前提。 僕もやはりここに戻って来たいと、 そう感じた。 心暖かい北の島だった。
2時間ほどで稚内に到着。 12:57発の急行サロベツに乗らなくては、夜の北斗星に乗り継げない。 すぐに分解して輪行袋に詰め込む。 満員の列車は、数日前に自転車で走ったルートと数箇所で交差した。 つい数日前の記憶が鮮明に甦る。 天塩川ではカヌーが何艘も浮いていた。 札幌まで6時間。 ずいぶん長く感じた。
19:24発 北斗星6号で一路北海道をあとにする。 最後に飲むビールは、 決まってサッポロClassic。 北海道限定発売だ。 北海道の旅をしめくくるのに、ほどよい苦さだ。
早朝に郡山に到着。
今回の旅は、626.9 kmを実質6日で走り、かつ利尻山に登山し、 内容的にはかなりハードなものだった。 この旅を終えて感じたが、 8泊9日の旅をすれば、5日間は走れる。 1回当り5日でも、3年繰り返せば15日になる。 一日80 kmでも合計すれば1000 km以上は走れる。 学生時代と違い、長期の休みは取れないから、 長い目で見たサイクリングをしてみよう。 一度に旅を完結させてしまうと、 次の旅を考えるときには初めから考えなければならない。 でも線でつないでいくサイクリング、つまり次があると思えば、 無理もしないし楽しみを取っておくことも出来る。 そんなライフワーク的な旅をしてみよう。 いつまでも楽しみがあるほうが、普段の生活も楽しめるだろうし。 そんな風に感じた。