1991年春 西日本横断 - 39泊40日 2900 km

その1: 九州・前編 2月27日 (水) 〜 3月4日 (月)

(地図1: 旅の行程概略)

2月27日 (水): 45.4 km

前日に年度末の試験を終了し、翌朝には出発。 試験勉強はしっかりしたので、3年生に進学できるのは間違いない。 そんな中でも、試験期間の合間はほぼ1日おきに、古新聞や雑誌で約15kGの重荷を作り、 それを自転車のサイドバックに入れて30〜40kmを走りこんでいた。 体力には十分自信があった。
川崎のカーフェリーターミナルまで、半日の行程。 川崎大師で旅の安全を祈願し、長い長い旅が始まった。

(写真2: シーコムフェリー)

2月28日 (木): 24.7 km

このカーフェリーが揺れに揺れた。 太平洋に低気圧が来ているため、波が高い。 もちろん船底の2等船室での雑魚寝状態。 ついにはたまらなくなり、吐き出す。 おぇー。 これではいかん、 体力が奪われてしまう、と食事を無理やり摂るが、食べた先から吐き出す。 うぐぉぇー。 最悪だ。 早く九州に着かないか、そればかり考えていた。
夕方に宮崎県日向港に到着。 まともな食事をしていないのだからヘロヘロだ。 今日は宿を予約していない。 多少天気に不安があるが、早速野宿と決め込んでいた。
北に進み延岡へ。 夕食後、町外れの公園のベンチへ。 これは、昨夏みちのくの旅で学んだこと。 新品の寝袋を出して眠っていると、何だかポツポツ。 雨だ。 困った。 と思って見回すと、そこに土管があるではないか。 のび太君ではないけれど、土管の中にマットを敷き、寝袋を出して睡眠。 雨は弱かったのでたいした事はなかったが、 九州とはいえ2月の夜は寒かった。 長い旅の始めから、波乱の予感。

3月1日 (金): 66.3 km

九州に来たらどうしても行きたかった高千穂峡。 そこが今日の目的地。 国道218号線は五ヶ瀬川と高千穂鉄道と並行し、 高千穂に向かって山を登る。
高千穂は日本神話のふるさと。 天照大神 (アマテラスノオオミカミ) が地上を支配するために、 孫の邇邇芸命 (ニニギノミコト) を降臨させた場所が高千穂。 彼は神武天皇の曾祖父にあたるとのこと。 関連する場所として高天原や天岩戸など色々行きたくなるが、僕は展望の良い国見が丘に行った。 ここから見下ろす緩やかな丘陵地帯が、ニニギノミコトに代わって僕に貰えるとなったら、どんなに楽しいことだろう。
高千穂のもう一つの名所はなんと言っても高千穂峡。 真名井の滝を代表に、100 mの絶壁が続く。
毎日、神楽も行われているらしいが、理解するにはまだ若すぎる。 次回来るときに見ることにした。
今日はようやくユースホステルで布団で眠れる。 昨晩は土管の中だったと話すと、誰もが少し驚いたようだった。 それはそうさ。 僕だって予想していなかったのだから。

(写真3: 高千穂峡 真名井の滝) (写真4: 高千穂 国見が丘)

3月2日 (土): 90.9 km

今日は九州を横断する。 急坂を登りつづけて標高800 m超の高森峠トンネル。 世界一巨大な阿蘇カルデラの外輪山。 すでに熊本県に入っている。 ここからに一気の下りでカルデラに入る。 カルデラの内側は、外側と比べてかなりの急坂だ。
JR肥後本線と南阿蘇鉄道が合流する立野駅に自転車を残し、JRとバス、ケーブルカーを使って、阿蘇山の噴火口まで観光。 この世界一大きなカルデラ火山は、今日僕が数時間かけて走ってきた道程を考えただけでも、その巨大さが体感できた。
下り下って、熊本市街地。 水前寺公園目の前にあるユースホステルに宿泊。 商店街では水前寺清子の曲が流れていた。

(写真5: 阿蘇の火口) (写真6: 水前寺公園)

3月3日 (日): 96.1 km

熊本市街地の名物は、城下町特有の曲がりくねった道路。 熊本城に近づくほど、方角が分からなくなる。
熊本県には美しい島々もある。 天草列島だ。 雲仙天草国立公園にも指定されている。 これらの島々には、九州本土から橋が架かっているので、自転車で訪れることができる。 天草五橋を越えるあたりが、 天草松島と呼ばれる風光明媚な風景。 橋が高い所を通っているので、そこまで都度登るのが辛い。
遠くに雲仙普賢岳の噴煙が見える。 この当時は、噴煙を上げたばかりだったが、その3ヵ月後に溶岩ドームから大火砕流が発生し、
多くの人命が奪われる悲劇が起こった。 そんなことは、この時は全く想像だにしていなかった。
天草上島から下島に渡ったところが、本渡という地。 島原の乱の激戦地となった所。 天草四郎にまつわる遺跡が多い。 ここにあるユースホステルに泊る。

(写真7: 雲仙を臨む)

3月4日 (月): 49.4 km

天草下島の富岡港からフェリーで長崎茂木港へ。 小さな峠を越えると、長崎市街地だ。 宿は浦上が丘にあるユースホステルにとってある。 明日一日かけてゆっくりと長崎を観光しよう。

この区間の旅の行程。

日付 行程 走行距離 宿泊地 宿
2/27府中 ⇒ 川崎 =(フェリー)45.4 km(フェリー)フェリー
2/28(フェリー)= 日向 ⇒ 延岡24.7 km宮崎県・延岡野宿
3/1延岡 ⇒ 高千穂66.3 km宮崎県・高千穂YH
3/2高千穂 ⇒ 阿蘇 =(バス)=阿蘇山=(バス)= 阿蘇 ⇒ 熊本・水前寺90.9 km熊本県・水前寺YH
3/3水前寺 ⇒ 天草五橋 ⇒ 天草96.1 km熊本県・天草YH
3/4天草 ⇒ 富岡 =(フェリー)= 茂木 ⇒ 長崎49.4 km長崎県・長崎YH

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