カムチャツカ半島アバチャ登山とフラワーハイキング

2: アバチャ山登頂

7月20日 (日)

現地時間の2:00過ぎに眠り、しかし起床は8:00。 日本時間としてはまだ4:00なので、眠い眠い。 梅雨空。 何と、この時期のカムチャツカの天候はそれほど良くないらしい。 ホテルに不要な荷を残し、ひとまずチェックアウト。 これから3日間は、 アバチャ山麓でのキャンプハウス生活。 食事もお菓子も、全て提供されるとの事だが、 高そうに思えたので、エリゾボ市の市場で買出しの際に、ビールを10本ほど購入した。 1ルーブル ≒ \4程度として、瓶ビール1本 (500mL) が20ルーブル前後。 無茶苦茶安いわけではないが、ロシアで物が自由に買えるということのほうがスゴイと感じた。 少し前までは配給でまかなっていたと言うイメージが強いだけに。

(写真1: 市場にて1: スモークサーモン) (写真2: 市場にて2: 果物が並ぶ)

さて、改造大型バスは、アバチャ山ベースキャンプへ向け、道無き道を突き進む。 道として利用しているのは河原。 直径1m以上あるタイヤで、1m位の段差など物ともせず走っていく。 おかげで乗っている我々は酔う寸前。 途中で立ち往生している車も珍しくない。 雪渓を越え、ガレ場を越え、昼過ぎにベースキャンプ到着。 これまで霧に覆われていたが、 不意にVlc. Koryaksky (コリャーク山 3456m) の尖った頂きが雲の合間から見え出した。 北海道の利尻山とイメージが近いが、高さが2倍ある。 ベースキャンプからの標高差は2600m。 非常に魅力のある山だが、一般人には、登る山ではなく見るだけのほうが良さそうだ。

(写真3: 改造大型バス) (写真4: アバチャベースキャンプからのコリャーク山)

昼食後に、明日のアバチャ山のための足馴らしのためと言うことで、 近くに見えるMt. Camel (ラクダ山 1381m) を登ることとなった。 足慣らしとは言っても、 標高差は500m以上。 でもさすがにこのツアーの参加者は、これごときの山では、 ヒーともフーとも言わない。 相変わらずアバチャ山は雲の中。 足元はガレた岩場だったりするが、 待ち望んでいた高山植物がそこかしこに咲き乱れている。 花に詳しい参加者に聞いた限りでは、 チョウノスケソウ、マンテマ、ウルップソウ、イソツツジ、オヤマノエンドウ (レブンソウ)、 ヒナゲシ、ユキバトウヒレン、チシマリンドウ、ツガザクラなどなど。 名前が判らない花もまだまだある。 頂上直下は岩が急で、母は危なっかしかったが、 それでも全員登頂。 雲が覆い、視界はそれほど良くないが、1時間30分程度の足馴らしと考えれば、 花も楽しめたし十分だ。 風はやはり強く寒い。

(写真5: ラクダ山と母) (写真6: ラクダ山直下) (写真7: イワギキョウ)

下山後にアバチャ山がうっすらと雲を通して見えた。 時差ボケもなさそう。 体調はバッチリだ。

7月21日 (月)

夜は22:00過ぎまで明るかった。 朝の6:00には、既にうすら明るい。 起きてすぐに外に出た。 アバチャ山が大きく見えたが、すぐに雲に隠れた。 正確に言うとキャンプハウスが雲に覆われた。 このキャンプハウスとは、簡単にいうとバンガローのようなもの。 ガイドを含め、 参加男性5人で泊まっている。 2段ベットになっていて5人には十分な広さ。 参加者の多い女性部屋は狭いようだ。 センターハウスが別にあり、そこで食事をとる。 日本から3組のツアーが同時期にアバチャに登るため、このベースキャンプに来ている。 ロシア人より日本人のほうが多いくらいだ。

さて、7:30にいよいよ歩き出す。 山頂を目指さないフラワーハイク組みの3名 (母もその一人) も、途中の2000m地点までは一緒に歩く。 とてもゆっくりしたペース。 ただ、終えてから考えると、バテず疲れも残らなかったから、良いペースだったのだろう。 自分一人だったらハイペースで登り、きっとバテていたろう。 昨日見なかった花としては、 アキノキリンソウ、キバナシャクナゲ、イワシャジン、フウロソウなど。 日本名がわからないが、 ロシア名でニエザブガンという花も咲いていた。 標高を稼ぐにつれ、徐々に雲から抜け出し、 アバチャ山とコリャーク山が大きく見え始めた。 深い青空。 雪渓の雪が眩しい。 昨日登ったラクダ山はすでに遥か眼下の小さな「こぶ」にしか見えない。 高山植物も無くなり、 茶色い地面剥き出しの登山道を、ゆっくりゆっくり、確実に登っていく。

(写真8: アバチャ山 2741m) (写真9: コリャーク山と登山者)

歩き始めて4時間ほどで2000m地点。 ここに気象観測の石室がある。 ここでフラワーハイク組みの母は引き返し。 標高差1200m近くを登ったのだから、 日本でなら立派な山登りになる。 60歳を過ぎているのに、大したものだ。 さて、75歳を筆頭とする登頂組みは、岩陰で昼食。 風が強烈で、 気温は低くないのに体感気温は非常に低く、寒い。 冬用のジャケット上下を着て、放熱を防ぐ。 アバチャ山は活火山。 最近では1945年と1991年に噴火していて、今も噴煙が立ち昇っているのだが、 今日の激風で、煙はかき消されている。

ここからの登りは辛かった。 山頂までの標高差はさらに約800m。 足元は一歩登っては半歩ズルズルと下がってしまうような、ザレザレの道。 要するに富士山の須走を登るようなもの。 またはアリ地獄の巣を登っているようなもの。 しかも、爆風を防ぐものが何も無い山肌。 チーターじゃないが、三歩進んで二歩下がるペースで、 標高を上げていくしかない。

これまで隊列を保っていたツアー登山隊も、ついにバラバラと解け始めた。 2時間ぐらいアリ地獄と格闘。 さすがに最後は辛かったが、何とか14:30に登頂できた。 高かったコリャーク山は見上げることなく正面に望める。 これまで見えなかった北東の山々も、 雲の上に顔を出している。 アバチャ山が活火山である証拠に、山頂脇を黒々とした溶岩が覆っている。 水蒸気も色々なところから立ち上っている。 本当の最も高い所は、危険で近寄れない。 ここが山頂。登頂予定の全員が、バラバラながら登頂を果たした。 結構待ったので、 体を冷やさないように岩陰で風を避けている時間が長かった。

(写真10: アバチャ山 山頂にて) (写真10: コリャーク山を臨む)

下山は重力に任せればよいというほど簡単ではなかった。 特にアリ地獄の下りは、 勢いがつきすぎると前につんのめって転んでしまうので、風を考えながらズルズルと下っていく。 もう砂まみれ。 目、鼻、耳など穴という穴は砂で満たされた。 下山後に顔を拭いたら、 驚くほど真っ黒だった。 約4時間かけて下山。 19:20になったが、まだ明るい。 ゆっくり歩いたおかげでバテてはいないものの、もう歩きたくない。 とにかくアバチャ山に登ったんだ!! ビールを飲んだら、もうトロトロだった。

7月22日 (火)

今日は登山予備日。 この日のほうが、前日より比較的穏やかだった。 というのも、快晴。 雲が無い。 アバチャ山頂の噴煙はかき消されること無く、真横に飛んでいる。 暑いだろうが、 昨日よりは登山日和だったろう。 今日は、コリャーク山の麓の草原をフラワーハイキング。 特にルートがあるわけではないので、花を踏まないように、気をつけて歩く。 でもキリがないことに気付く。 それほど花が多い。 昨日まで見た花に加え、トウヤクリンドウ、 アズマギク、ハクサンイチゲ (カムチャツカイチゲか?)、シオガマ、ユキバトウヒレン、 タカネビランジ、エゾタカネヤナギ、バイケイソウ、ミヤマクワガタなどなど。 特にハクサンイチゲとウルップソウが多く、思わず笑みがこぼれる。 自由行動になってからは、 キャンプハウス周辺を少し歩いてサクラソウ、ワレモコウ、ヤナギラン、 ツガザクラなどなどを見つけた。 エブラシカというネズミとマーモットの中間の大きさの動物が、 この周辺には多い。 全く人間を怖がらないので、すぐ近くにまでやってくる。 昨日の疲れはほとんど無かったので、のんびりとくつろいだ一日だった。

(写真11: ツアー参加者と) (写真12: キバナシャクナゲ) (写真13: タカネビランジ)

(写真14: ハクサンイチゲ) (写真15: ウルップソウ) (写真16: エゾツガザクラ)

(写真17: ワレモコウ) (写真18: ヤナギラン) (写真19: エブラシカ)

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