現地時間の2:00過ぎに眠り、しかし起床は8:00。 日本時間としてはまだ4:00なので、眠い眠い。 梅雨空。 何と、この時期のカムチャツカの天候はそれほど良くないらしい。 ホテルに不要な荷を残し、ひとまずチェックアウト。 これから3日間は、 アバチャ山麓でのキャンプハウス生活。 食事もお菓子も、全て提供されるとの事だが、 高そうに思えたので、エリゾボ市の市場で買出しの際に、ビールを10本ほど購入した。 1ルーブル ≒ \4程度として、瓶ビール1本 (500mL) が20ルーブル前後。 無茶苦茶安いわけではないが、ロシアで物が自由に買えるということのほうがスゴイと感じた。 少し前までは配給でまかなっていたと言うイメージが強いだけに。
さて、改造大型バスは、アバチャ山ベースキャンプへ向け、道無き道を突き進む。 道として利用しているのは河原。 直径1m以上あるタイヤで、1m位の段差など物ともせず走っていく。 おかげで乗っている我々は酔う寸前。 途中で立ち往生している車も珍しくない。 雪渓を越え、ガレ場を越え、昼過ぎにベースキャンプ到着。 これまで霧に覆われていたが、 不意にVlc. Koryaksky (コリャーク山 3456m) の尖った頂きが雲の合間から見え出した。 北海道の利尻山とイメージが近いが、高さが2倍ある。 ベースキャンプからの標高差は2600m。 非常に魅力のある山だが、一般人には、登る山ではなく見るだけのほうが良さそうだ。
昼食後に、明日のアバチャ山のための足馴らしのためと言うことで、 近くに見えるMt. Camel (ラクダ山 1381m) を登ることとなった。 足慣らしとは言っても、 標高差は500m以上。 でもさすがにこのツアーの参加者は、これごときの山では、 ヒーともフーとも言わない。 相変わらずアバチャ山は雲の中。 足元はガレた岩場だったりするが、 待ち望んでいた高山植物がそこかしこに咲き乱れている。 花に詳しい参加者に聞いた限りでは、 チョウノスケソウ、マンテマ、ウルップソウ、イソツツジ、オヤマノエンドウ (レブンソウ)、 ヒナゲシ、ユキバトウヒレン、チシマリンドウ、ツガザクラなどなど。 名前が判らない花もまだまだある。 頂上直下は岩が急で、母は危なっかしかったが、 それでも全員登頂。 雲が覆い、視界はそれほど良くないが、1時間30分程度の足馴らしと考えれば、 花も楽しめたし十分だ。 風はやはり強く寒い。
下山後にアバチャ山がうっすらと雲を通して見えた。 時差ボケもなさそう。 体調はバッチリだ。
夜は22:00過ぎまで明るかった。 朝の6:00には、既にうすら明るい。 起きてすぐに外に出た。 アバチャ山が大きく見えたが、すぐに雲に隠れた。 正確に言うとキャンプハウスが雲に覆われた。 このキャンプハウスとは、簡単にいうとバンガローのようなもの。 ガイドを含め、 参加男性5人で泊まっている。 2段ベットになっていて5人には十分な広さ。 参加者の多い女性部屋は狭いようだ。 センターハウスが別にあり、そこで食事をとる。 日本から3組のツアーが同時期にアバチャに登るため、このベースキャンプに来ている。 ロシア人より日本人のほうが多いくらいだ。
さて、7:30にいよいよ歩き出す。 山頂を目指さないフラワーハイク組みの3名 (母もその一人) も、途中の2000m地点までは一緒に歩く。 とてもゆっくりしたペース。 ただ、終えてから考えると、バテず疲れも残らなかったから、良いペースだったのだろう。 自分一人だったらハイペースで登り、きっとバテていたろう。 昨日見なかった花としては、 アキノキリンソウ、キバナシャクナゲ、イワシャジン、フウロソウなど。 日本名がわからないが、 ロシア名でニエザブガンという花も咲いていた。 標高を稼ぐにつれ、徐々に雲から抜け出し、 アバチャ山とコリャーク山が大きく見え始めた。 深い青空。 雪渓の雪が眩しい。 昨日登ったラクダ山はすでに遥か眼下の小さな「こぶ」にしか見えない。 高山植物も無くなり、 茶色い地面剥き出しの登山道を、ゆっくりゆっくり、確実に登っていく。
歩き始めて4時間ほどで2000m地点。 ここに気象観測の石室がある。 ここでフラワーハイク組みの母は引き返し。 標高差1200m近くを登ったのだから、 日本でなら立派な山登りになる。 60歳を過ぎているのに、大したものだ。 さて、75歳を筆頭とする登頂組みは、岩陰で昼食。 風が強烈で、 気温は低くないのに体感気温は非常に低く、寒い。 冬用のジャケット上下を着て、放熱を防ぐ。 アバチャ山は活火山。 最近では1945年と1991年に噴火していて、今も噴煙が立ち昇っているのだが、 今日の激風で、煙はかき消されている。
ここからの登りは辛かった。 山頂までの標高差はさらに約800m。 足元は一歩登っては半歩ズルズルと下がってしまうような、ザレザレの道。 要するに富士山の須走を登るようなもの。 またはアリ地獄の巣を登っているようなもの。 しかも、爆風を防ぐものが何も無い山肌。 チーターじゃないが、三歩進んで二歩下がるペースで、 標高を上げていくしかない。
これまで隊列を保っていたツアー登山隊も、ついにバラバラと解け始めた。 2時間ぐらいアリ地獄と格闘。 さすがに最後は辛かったが、何とか14:30に登頂できた。 高かったコリャーク山は見上げることなく正面に望める。 これまで見えなかった北東の山々も、 雲の上に顔を出している。 アバチャ山が活火山である証拠に、山頂脇を黒々とした溶岩が覆っている。 水蒸気も色々なところから立ち上っている。 本当の最も高い所は、危険で近寄れない。 ここが山頂。登頂予定の全員が、バラバラながら登頂を果たした。 結構待ったので、 体を冷やさないように岩陰で風を避けている時間が長かった。
下山は重力に任せればよいというほど簡単ではなかった。 特にアリ地獄の下りは、 勢いがつきすぎると前につんのめって転んでしまうので、風を考えながらズルズルと下っていく。 もう砂まみれ。 目、鼻、耳など穴という穴は砂で満たされた。 下山後に顔を拭いたら、 驚くほど真っ黒だった。 約4時間かけて下山。 19:20になったが、まだ明るい。 ゆっくり歩いたおかげでバテてはいないものの、もう歩きたくない。 とにかくアバチャ山に登ったんだ!! ビールを飲んだら、もうトロトロだった。
今日は登山予備日。 この日のほうが、前日より比較的穏やかだった。 というのも、快晴。 雲が無い。 アバチャ山頂の噴煙はかき消されること無く、真横に飛んでいる。 暑いだろうが、 昨日よりは登山日和だったろう。 今日は、コリャーク山の麓の草原をフラワーハイキング。 特にルートがあるわけではないので、花を踏まないように、気をつけて歩く。 でもキリがないことに気付く。 それほど花が多い。 昨日まで見た花に加え、トウヤクリンドウ、 アズマギク、ハクサンイチゲ (カムチャツカイチゲか?)、シオガマ、ユキバトウヒレン、 タカネビランジ、エゾタカネヤナギ、バイケイソウ、ミヤマクワガタなどなど。 特にハクサンイチゲとウルップソウが多く、思わず笑みがこぼれる。 自由行動になってからは、 キャンプハウス周辺を少し歩いてサクラソウ、ワレモコウ、ヤナギラン、 ツガザクラなどなどを見つけた。 エブラシカというネズミとマーモットの中間の大きさの動物が、 この周辺には多い。 全く人間を怖がらないので、すぐ近くにまでやってくる。 昨日の疲れはほとんど無かったので、のんびりとくつろいだ一日だった。
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