一晩中雨だった。 夜中に列車が通り抜けたりして何度か目を覚ました。 5:50頃にぼんやりと起床。 6:25に下りの始発兼最終列車が停車した。 またも乗降客なし。
7:20、雨の中を出発。 直前までどのルートを走るか迷っていた。 出発前に考えていたのは天塩山系の浮島峠か於鬼頭峠を越えて、岩尾内に入るものだった。 ただ、大雨注意報が出ている中で峠越えは馬鹿らしい。 きっと楽しくない。 翌々日に到着する予定だった朱鞠内まで最短距離で行けば今日中に到着できる。
と言う事で、また上川に戻り、さらに西の愛別へ。 ここでまたもトラブル。 今度はパンクだ。 どうりで下りなのに進みが悪いわけだ。 運良く道路脇に雨宿りが出来るガレージがあったので、勝手に失敬してその中で修理。 久々のパンク修理だったが、雨にあたらなかったので手際よく直すことが出来た。
向かい風の中、塩狩峠 (標高249m) を越える。 低い峠だが、石狩川流域と天塩川流域の分水嶺。 三浦綾子の小説 『塩狩峠』 の舞台。 ここから北が道北。 気温14度。 寒い。
峠を越えても向かい風は続く。 10:00の時点で既に40 km走ったので、お腹がすいた。 立派な屋根付きのバス停で、食パンにカロリーたっぷりのピーナッツバターを塗り、血糖値を上げる。 休憩の間に雨は止み、ついにこの旅で初めての青空が見えた。 気温も20度まで上がってきて、 ようやく走りながら鼻歌を歌える気分になってきた。 温根別から川沿いに坂を登り、朱鞠内へ。 廃線になったばかりのJR深名線駅舎跡を訪れた後に湖へ。 朱鞠内湖は国内最大の人造湖、 つまりダム湖。 とてもそうは見えないくらい原生林に囲まれている。 またここは国内最寒の地。 昭和53年2月17日にマイナス41.2度が記録された。 バナナでクギが打てる寒さだ。 明治35年1月にもマイナス41度を旭川で記録している。 この周辺は日本最寒の地だ。 今は夏。 すっかり青空が戻り、陽気が回復してきたとはいえ、やはり湖からの風が通り抜け、涼しい。 今日はここでキャンプ。
昨日吹き続けていた東風が止み、穏やかな朝を迎えた。 5:10起床。 すでに太陽は対岸の森の上高くに昇っている。 厚い雲。 寒い。 天気予報は晴れなのだが、 大丈夫か?
6:45出発。 今日の目的地は遠別。 日本海側の羽幌経由でも天塩川沿いの美深経由でも同じくらいの距離。 北海道の日本海側を知らないので、羽幌経由の別名オロロンラインを選んだ。 添牛内まで南下し国道239号線で霧立峠 (標高410 m) 越え。 ゆっくり登ったが、 あっさり着いてしまった。 霧。 12度くらいと寒い。 下りはさすがに寒いのでパーカーを着なければならなかった。 そうそう、ここでもトラブル。 峠で記念の写真撮影時にカメラを落下させ、内臓露出計スイッチのストッパーが効かなくなった。 レンズとか致命的な箇所での故障ではなく、撮影時に注意するだけなのが救いだ。 ダウンヒルは長かった。 徐々に陽も照り始め、追い風になり、 日本海に10:30に着くまでに既に70 kmも走ってしまった。 ここからは、 日本海を左に見て稚内まで北上するのみ!!
日本海は青く輝き、オロロン鳥で有名な真っ平な天売島と焼尻島が近くにに見える。 オロロン鳥とはウミガラスの別名。 日本では天売島が唯一の繁殖地。 オロローンと鳴くらしいので、その別名があるようだが、絶滅の危機にある種なので、 生の声を聞いたことは残念ながら無い。 適度にアップダウンした、 スケールが大きく車通りの少ない道路をひた走る。
特に何も無いルートだが、ついに利尻が遠くに見え始めた。 足元を見ると、ナデシコ、キキョウ、ギボウシなどの高山植物が、海抜10 mのこの地に咲いている。 気温は25度を超えた。 昼食までに100 kmを走り、午後はのんびりと走るだけ。 2:30には遠別に到着し、無料のキャンプ場にテントを張る。 東風が強く、 テントが飛ばされないよう用心した。
夕刻のサンセットセレモニーは素晴らしかった。 利尻が真っ赤な夕日に演出され、 異様な存在感でそこにあった。
5:10起床。 冷え込んだ。 6:45に走り出したが、相変わらず東風が吹いている。 ついにサロベツ原野地域に入った。 道路脇には名の知らぬ色とりどりの花が咲いている。 途中で知り合った京都出身の若いチャリダーと暫く一緒に走る。 彼は今回が初の長旅。 将来有望。 立派なチャリダーに育ってくれ。 (解説すると、チャリダーとは自転車に乗って旅をする者を言い、バイクの場合はライダーと言い、 列車の場合はジェアラー (JRer) であり、徒歩の場合はカニ族という。 ただし現在は真の意味でのカニ族が絶滅の危機に瀕しているらしい。) サロベツ原生花園に入るが花のシーズンが終わってしまったのか、余程道路脇のほうが華々しかった。
サロベツ原野内の道道を縦断する。 たまに砂利道も走る。 そのうち牧草地帯となり、 風景は緑時々牛になった。 正午過ぎには今日の予定地である兜沼に着いてしまった。 まだまだ走れるので、日本海側に再度抜けて、野寒布 (ノシャップ) 岬を目指す。 風が容赦無く吹きつける。 気温14度で風力6 m/秒。 瞬間的には10 m/秒程度で吹いているので、 体感気温は冬並みだ。 今まで前に見えていた利尻島が、 野寒布岬からは後ろに見えるようになっていた。
稚内駅で帰りの北斗星の予約をダメ元で予約を確認したら、何と空席があった。 1ヶ月前では満席だったのに、キャンセルでも出たのだろうか。 ここまでトラブルが多かったが運が巡って来たのか?
明日はいよいよ日本最北端の宗谷岬。 少しでも近づくために、 稚内空港近くのキャンプ場までさらに走った。 向かい風が続き、 3日連続で100 kmを走っていたためヘロヘロになってキャンプイン。 森の中のため風が吹かないのは幸いだった。 道南と道央地方では大雨警報が出ているとラジオの天気予報が言っていた。 雨が降っていない分、風くらい我慢しなくては。